東京高等裁判所 平成2年(ラ)661号 決定
会社更生法六七条一項は、更生手続開始の決定があったときは、更生債権若しくは更生担保権に基づく会社財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、競売及び企業担保権の実行は、することができず、既にされているこれらの手続は中止する旨定めている。これは、更生手続開始後もこれらの手続を許したのでは更生手続の円滑な実施は望めないし、また、更生手続が成功すればこれらの手続は必要なくなることから、更生裁判所の統一的な監督のもとで更生手続を他の手続より優先して行わせようとする趣旨に出たものである。そして、抵当証券法に基づき抵当証券が発行されている抵当権は、被担保債権と合体して証券に化現され、その流通がはかられているものであるが、抵当権の実行そのものは通常の抵当権による競売と同様の手続によって行われ、その実行の効力ないし効果についても、通常の抵当権の実行と異なる特別のものがあることを認めた規定は見当たらない。そうであるとすれば、会社更生法の上記規定の趣旨に照らし、抵当証券の発行されている抵当権について、抵当証券が発行されていることの故に、抵当権の実行を更生手続に優先させるべき理由はないというべきである。もっとも、抵当証券法三〇条一項は、抵当証券の所持人は、債務者が元本の支払をなさざるときは弁済期より三か月以内に抵当権の目的たる物件につき競売の申立をなすことを要する旨定めるが、この規定は、証券所持人に対して競売申立てを一般的に義務づけたものではなく、証券所持人の裏書人に対する償還請求の要件を定めたにとどまるものであって、上記のように会社更生手続との関係において競売申立てが制限される場合には、裏書人に対する償還請求は、同法三二条一項の規定を準用して裁判所の許可を得て行うことができると解する余地があるので、同法三〇条一項の規定を根拠として、抵当証券の発行された抵当権の実行が更生手続に優先すると解することはできない。
本件についてみるに、本件記録によれば、本件の抵当証券の債務者は株式会社クロス・カルチャー事業団であったが、同社について平成二年三月五日更生手続が開始され、同社に対して抗告人が有していた上記請求債権目録記載の請求権(被担保債権)は更生担保権になると認められるから、抗告人の本件の抵当権に基づく競売開始の申立ては、不適法であり、却下すべきである。
(佐藤 岩井 小林)